水質基準項目(51項目)について
一般細菌
- (基準値:1mLの検水で形成される集落の数が100以下であること)
自然界に一般的に存在する細菌の総称で、ほとんどが病原性のない細菌です。清浄な水には少なく、汚染された水には多い傾向があるため、水の汚染状況や一般的な清浄度を示す指標となります。これが著しく増加した場合には、病原微生物に汚染されている疑いがあります。また、消 毒効果の確認の指標にもなります。
大腸菌
- (基準値:検出されないこと)
コレラ、赤痢等の水系感染症の原因菌は、主に糞便に由来するものです。大腸菌は、人や動物の腸管に常在しており、糞便と共に排泄されることから、糞便汚染の指標になります。よって、大腸菌が検出された場合、糞便による汚染が疑われ、病原微生物による汚染の可能性があります。
また、クリプトスポリジウムの汚染も考えられ、クリプトスポリジウムの指標菌にもなっています。
カドミウム及びその化合物
- (基準値:カドミウムの量に関して、0.003mg/L以下)
電池やメッキ等に使われます。河川水等で検出されることはまれで、鉱山排水や工業排水等の影響により河川等で検出されることがあります。急性中毒として嘔吐、めまい、頭痛等、慢性中毒として異常疲労、貧血、骨軟化症等の症状があらわれ、イタイイタイ病の原因物質として知られています。
水銀及びその化合物
- (基準値:水銀の量に関して、0.0005mg/L以下)
自然界では極微量に存在しています。河川水等で検出されることはまれで、硫化水銀鉱床地帯等の自然環境に由来するほか、工場排水、農薬、下水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。有機水銀化合物は、人体に蓄積し、中枢神経への強い障害を与え、水俣病の原因物質として知られています。
セレン及びその化合物
- (基準値:セレンの量に関して、0.01mg/L以下)
自然界では極微量に存在しています。河川水等で検出されることはまれで、鉱山排水や工業排水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。毒性が強く、必要量と中毒量の差がとても小さく、セレンを慢性的に過剰摂取すると、爪の変形や脱毛、胃腸障害、下痢、疲労感、焦燥感、末梢神経障害、皮膚症状等がみられます。
鉛及びその化合物
- (基準値:鉛の量に関して、0.01mg/L以下)
自然界でも広く存在しますが極微量で、工業製品中にも含まれ環境中に存在しています。土壌などの自然環境に由来するほか、鉱山排水や工場排水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。水道水中で検出される鉛は、軟水やpHの低い水において鉛管からの溶出に由来することがありますが、鉛管は、近年はほとんど使用されていません。急性中毒として嘔吐、腹痛、下痢、血圧降下等、慢性中毒として疲労、けいれん、便秘等の症状があらわれます。
ヒ素及びその化合物
- (基準値:ヒ素の量に関して、0.01mg/L以下)
自然界では極微量に存在し、鉱泉等の自然環境に由来するほか、鉱山排水、工場排水や農薬等の混入によって河川水や地下水等で検出されることがあります。毒性が強く、農薬(亜ヒ酸)等に利用されています。急性中毒として嘔吐、下痢、腹痛等、慢性中毒として皮膚の角化症、黒皮 症、末梢神経炎等の症状があらわれます。また、発がん性物質としても知られています。
六価クロム化合物
- (基準値:六価クロムの量に関して、0.02mg/L以下)
自然界のクロムは三価のものが広く安定して存在するのに対して、六価クロムはクロム鉱石として限定的に存在するに過ぎない。三価のクロムには毒性がありません。六価のクロムは、鉱山排水や工場排水などの混入によって河川水等で検出されることがあります。強い毒性を持ち、 急性中毒として腸カタル、嘔吐、下痢等、慢性中毒として肝炎等の症状があらわれます。また、発がん性物質としても知られています。
亜硝酸態窒素
- (基準値:0.04mg/L以下)
シアン化物イオン及び塩化シアン
- (基準値:シアンの量に関して、0.01mg/L以下)
自然界では、植物にシアン配糖体として極微量存在することがあります。メッキや金銀の精錬、写真工業等で使用されており、工場排水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。
シアン化物イオンは、青酸という呼び名で知られ、中でもシアン化カリウムは青酸カリという名の毒物としてよく知られています。塩化シアンはシアン化物イオンと塩素が反応して生成されます。急性中毒として、血液中のヘモグロビンが酸素を運ぶ作用を阻害し、窒息により死に至ります。
また、フミン質とアンモニア、塩素が反応しCN(シアン)を生成し、更に塩素が反応してCNCl(塩化シアン)が生成します。更に塩素が存在するとCO2とN2に分解します。塩素が不足した場合にはCN、CNClが残ることになります。劣化した次亜塩素酸液を使用すると塩素添加量が不足するので、シアンおよび塩化シアンが分解されないままになることがあります。このことより、近年、消毒副生成物としても取り扱われています。
硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
- (基準値:10mg/L以下)
水、土壌中の無機窒素は、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素の3つの形で存在しています。通常、有機物が分解されるとまずアンモニア態窒素が生成され、水、土壌中の硝酸菌の作用で亜硝酸態窒素を経て硝酸態窒素にまで変換されます。窒素肥料、腐敗した動植物、生活排水、下水等の混入によって河川水等で検出されます。高濃度に含まれると幼児にメトヘモグロビン血症(チアノーゼ症)を起こすことがあります。
フッ素及びその化合物
- (基準値:フッ素の量に関して、0.8mg/L以下)
自然界に広く存在し、主として地質や工業排水等の混入により河川水等で検出されることがあります。適量の摂取は、虫歯予防の効果があるとされていますが、高濃度に含まれていると斑状歯になることがあります。
ホウ素及びその化合物
- (基準値:ホウ素の量に関して、1.0mg/L以下)
自然界では、ホウ酸又はホウ酸塩の形で広く分布しています。火山地帯の地下水や温泉、工場排水等の混入によって河川水等で検出されることがあります。耐熱ガラス等の原料や金属の表面処理等に使われています。中毒症状としては、持続性の嘔吐と下痢、発疹、表皮剥離及び強度の落屑、痙攣、頭痛と精神錯乱を伴う中枢神経系症状等があります。
四塩化炭素
- (基準値:0.002㎎/L以下)
1,4-ジオキサン
- (基準値:0.05㎎/L以下)
シス-1,2-ジクロロエチレン及びトランス-1,2-ジクロロエチレン
- (基準値:0.04㎎/L以下)
ジクロロメタン
- (基準値:0.02㎎/L以下)
テトラクロロエチレン
- (基準値:0.01㎎/L以下)
トリクロロエチレン
- (基準値:0.01㎎/L以下)
ベンゼン
- (基準値:0.01㎎/L以下)
揮発性有機化合物(VOC(Volatile Organic Compounds))といわれるもので、常温常圧で空気中に容易に揮発する有機化合物の総称です。
人工合成されたもので、主に化学合成原料、溶剤、金属の脱脂剤、塗料、ドライクリーニングなどに使用され、 比重は水より重く、粘性が低くて難分解性であることが多いため、地下に浸透して土壌汚染や地下水汚染を引き起こします。人体への影響としては、頭痛やめまいの原因になるほか、神経系や肝臓・腎臓機能障害、発がん性を有することなどが報告されています。
塩素酸
- (基準値:0.6㎎/L以下)
消毒剤として使用される次亜塩素酸ナトリウム及び二酸化塩素の分解生成物です。次亜塩素酸を長期間貯蔵すると、その酸化により、塩素酸が生成されることがあり、 特に気温が高くなる夏期には生成量が増加することが明らかとなってきました。人体への影響としては、発ガン性に関する知見はないものの、赤血球細胞へダメージ(ヘモグロビン、血球容量、赤血球数の減少など)を与えることが報告されています。
クロロ酢酸
- (基準値:0.02㎎/L以下)
クロロホルム
- (基準値:0.06㎎/L以下)
ジクロロ酢酸
- (基準値:0.03㎎/L以下)
ジブロモクロロメタン
- (基準値:0.1㎎/L以下)
臭素酸
- (基準値:0.01㎎/L以下)
水中に存在している臭素や塩素消毒剤の不純物として存在している臭素が、浄水処理過程のオゾン及び消毒剤としての次亜塩素酸によって酸化されて生成されます。 人に対する発がん性の可能性があるとされています。
総トリハロメタン
(クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン及びブロモホルムのそれぞれの濃度の総和)
- (基準値:0.1㎎/L以下)
浄水過程で水中のフミン質(植物などが微生物によって分解されるときの最終分解生成物で、直鎖炭化水素と多環芳香族化合物の難分解性高分子化合物)と消毒剤の塩素が反応して生成される消毒副生成物で、水中の有機物質量や消毒の為の塩素注入量に密接に関係し、気温が高い時期に増加する傾向があります。
発ガン性が懸念され、腎毒性、腎臓腺種、肝毒性、肝細胞ガンなどを誘発することが明らかになっています。
トリクロロ酢酸
- (基準値:0.03㎎/L以下)
ブロモジクロロメタン
- (基準値:0.03㎎/L以下)
ブロモホルム
- (基準値:0.09㎎/L以下)
ホルムアルデヒド
- (基準値:0.08㎎/L以下)
防腐剤や殺菌剤としてよく知られているホルマリンの原料となる物質で、独特の刺激臭を持つ物質で、シックハウス症候群の原因としてもよく知られています。浄水処理過程で水中のアミン等の有機物質と塩素処理や特にオゾン処理を行うことで生じる消毒副生成物であり、発ガン性、変異原性、催奇形性、神経毒性等があり、非常に高い発ガン性を有しています。
亜鉛及びその化合物
- (基準値:亜鉛の量に関して、1.0㎎/L以下)
トタン板、乾電池等に使われています。地質により微量含まれている場合もありますが、鉱山排水、工場排水等の混入や亜鉛メッキ鋼管からの溶出に由来して検出されることがあります。亜鉛の毒性は比較的少なく、高濃度に含まれていると白濁の原因になります。
アルミニウム及びその化合物
- (基準値:アルミニウムの量に関して、0.2㎎/L以下)
- (目標値:0.1mg/L以下)
建築材料、電気機器、日用品関係等に広く利用されています。工場排水などの混入や、水処理に用いられるアルミニウム系凝集剤に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると白濁の原因となります。
鉄及びその化合物
- (基準値:鉄の量に関して、0.3㎎/L以下)
鉱山排水、工場排水などの混入や水道管から溶け出したものがほとんどで、特に古い給水管には、鉄製で内面にコーティング(保護措置)を施していないものがあり、しばらく使わなかった後、高濃度で検出されることがあります。高濃度に含まれると赤水や洗濯物等の着色、異臭味(カナ気)の原因になります。
銅及びその化合物
- (基準値:銅の量に関して、1.0㎎/L以下)
銅山排水、工場排水、農薬等の混入や給水装置などに使用される銅管、真鍮器具等からの溶出に由来して検出されることがあり、高濃度に含まれると洗濯物や水道施設を青色に着色する原因となります。
ナトリウム及びその化合物
- (基準値:ナトリウムの量に関して、200㎎/L以下)
広く自然水中に存在します。雨水や地殻にも含まれていますが、工場排水、生活排水、海水等の混入、塩素処理等の水処理により増加することがあります。
一般的に、地下水は表流水に比べて濃度が高いようです。高濃度に含まれると塩辛さを与え味覚を損なう原因となります。
マンガン及びその化合物
- (基準値:マンガンの量に関して、0.05mg/L以下)
- (目標値:マンガンの量に関して、0.01mg/L以下)
地質から溶けたものや、鉱山排水、工場排水の混入によって河川等で検出されることがあります。消毒用の塩素により徐々に酸化されて二酸化マンガンになり水道管の内壁に付着し、管内流速の変化等により剥離して黒い水の原因になることがあります。多量に長期間摂取すると慢性中毒として不眠、感情障害等、急性中毒として神経症状、全身けん怠感等の症状があらわれます。
塩化物イオン
- (基準値:200㎎/L以下)
地質や海水の浸透など天然に由来するものが多く、下水、家庭排水、工場排水及びし尿等から河川への混入により増加することがあります。高濃度に含まれると塩辛さを与え味覚を損なう原因となります。
カルシウム、マグネシウム等(硬度)
- (基準値:300mg/L以下)
- (目標値:10mg/L以上、100mg/L以下)
硬度とは、カルシウムとマグネシウムの塩類の合計量をいいます。主として地質によるものですが、工場排水、下水などの河川への混入により増加することがあります。硬度が低すぎると淡泊でコクのない味がし、硬度が高すぎると硬くてしつこい味がします。WHO飲料水水質ガイドラインでは0~120mg/lまでを軟水、それ以上を硬水といいます。硬度の高い水は、湯沸かし器等のスケールの付着や石けんの泡立ちを悪くしたり、下痢を起こすこともあります。
蒸発残留物
- (基準値:500mg/L以下)
- (目標値:30mg/L以上、200mg/L以下)
水を蒸発させたときに得られる残留物のことで、主な成分はカルシウム、マグネシウム、ケイ酸等の塩類及び有機物です。地下水や湧水等の硬度の高い水で、値が高いことがあります。自然に由来するもののほか、下水放流水や工場排水等が主な排出源です。残留物が多いと、苦み、渋みなどを付け、適度に含まれるとまろやかさを出すとされています。
陰イオン界面活性剤
- (基準値:0.2mg/L以下)
ジェオスミン
- (基準値:0.00001mg/L以下)
2-メチルイソボルネオール
- (基準値:0.00001mg/L以下)
湖沼などで富栄養化現象に伴い発生する異種味の原因物質で、ジェオスミンはアナベナ等の、2-メチルイソボルネオールはフォルミジウムやオシラトリア等の藍藻類によって産生され、かび臭を発生します。
非イオン界面活性剤
- (基準値:0.02mg/L以下)
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)や直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)やアルキルフェノールエトキシレート等、家庭用合成洗剤に広く使われています。
生活排水や工場排水などの混入に由来し、高濃度に含まれると泡立ちの原因となります。
フェノール類
- (基準値:フェノールの量に換算して、0.005mg/L以下)
自然水中には存在せず、合成樹脂や界面活性剤の原料として多量に使用されています。工場排水等の混入によって、河川水等で検出されることがあります。フェノールを含む水を塩素処理すると、クロロフェノールが生成して微量でも異臭味の原因となります。
有機物(全有機炭素(TOC)の量)
- (基準値:3mg/L以下)
水中に存在する有機物の主成分である炭素の総量のことで、有機物等による汚れの度合を示します。土壌に起因するほか、し尿、下水、工場排水などの混入によっても増加します。水道水中に多いと渋みをつけ、この値が小さいほど、水の味はよく感じられます。
pH値
- (基準値:5.8以上8.6以下)
- (目標値:7.5程度)
水の酸性度、アルカリ性度を表す指標で、0から14の数値で表され、7.0が中性。7.0より値が小さくなるほど酸性が強くなり、大きくなるほどアルカリ性が強くなります。一般に天然水のpHは5.0~9.0の範囲にあります。pH値が低いほど腐食性が高くなります。
味
- (基準値:異常でないこと)
臭気
- (基準値:異常でないこと)
水の味、臭気は、地質又は海水、工場排水、下水、化学薬品などの混入及び藻類等生物の繁殖に伴うもののほか、水道水では使用される管の内面塗装等に起因することもあります。
色度
- (基準値:5度以下)
水についている色の程度を示すもので、基準値の範囲内であれば無色な水といえます。
濁度
- (基準値:2度以下)
- (目標値:1度以下)
水の濁りの程度を示すもので、基準値の範囲内であれば濁りのない透明な水といえます。
ビル管理法水質検査項目(16項目他)のページへ